馬の学校アニマル・ベジテイション・カレッジは 馬のプロを目指している皆さんの夢を叶えるための学校です。

馬装

馬病理医の呟き=やさしい馬学講座Ⅸ=

=馬装具について1=

人間が馬を上手にコントロールするためには、各種馬装具を装着したほうが裸馬よりも更に制御しやすく、しかも人馬共に障害を少なくすることが可能となる。従って古くから馬との関り合いの強かった人間は、現在までいろいろと思考錯誤しながら馬との関係を良好なものへと導いてきたことの証しとして種々の馬装具と馬との諺がある。
最近印刷された馬装具について解かりやすく解説した刊行物(JRA馬事部発行・競走馬の馬装具・2005~2006)の内容・写真等を参考に現在使われている主な頭絡、銜、鞍、保護・特殊装具等の特徴を紹介し、もって正しい調教や制御によって起こる疾病・機能障害の予防・防具を考えてみようではありませんか!!

良い馬に関係する諺・言葉

*驥も櫪に伏す(きもれきにふす):
櫪(れき)は馬小屋、驥(き)は一日で千里を走る駿馬(しゅんめ)のことで、才能のある者が世に認められず、力を発揮できずにいることのたとえ。

*驥足を展ぶ(きそくをのぶ):
驥足(きそく)とは、駿馬の脚力の意味から、すぐれた才能のことを言う。したがって、優れた人がその才能を十分に発揮するという意味。

*塞翁が馬(さいおうがうま):
中国の辺境の砦に住む翁(おきな)の名を塞翁と呼び、その塞翁の馬が逃げたが北方の駿馬を率いて戻ってきた。その駿馬に息子が乗り落馬し骨折したために戦場にいかずに命を長らえたという故事。
 人生というのは吉凶・禍福が予測できないことのたとえ。『人間万事塞翁馬』とも言う。

*竜の馬(たつのうま):
竜の馬とは、優れた良馬のことを言う。
中国では龍をドラゴンと言い、古代中国では麒麟(きりん)や鳳凰(ほうおう)とともに神聖な生き物とされている。

*望月の駒(もちづきのこま):
奈良時代末期から平安時代、毎年8月の望月の頃、諸国から貢進した駒の
こと。特に信濃国にあった良牧の一つである「望月の牧」から献上されたものが優れていた。
現在は、望月の里には、「望月馬事公苑」があり、美しい自然に触れることのできる娯楽施設がある。

*龍馬(りゅうめ):
極めて優れた馬のことを言う。
『龍種(りゅうしゅ)』は優れた子馬を生んだ馬のこと、『龍蹄(りゅうてい)』とは駿馬のことである。龍と馬の響きは小気味が良く聞こえる。

1-1左図:霧島草競馬の一コマ。
1-2右図:図の○Noに一致した各種頭絡:①ギャグ頭絡。②銜なし頭絡。③大勒頭絡。④無口頭絡 (図は競走馬の馬装具を参考)
1.頭絡Bridlesについて:

頭絡は、競馬の世界では【天井】とも呼ばれ、銜(ハミ、クツワ、bit)を頭絡と連結して馬の口の適当な位置に保たせるもので、主に3種類ある。

*水勒頭絡⇔現在の競走馬や乗馬用に使用され、ハミは『水勒銜・小勒銜』で、両側から一本ずつ手綱が出ている。

*大勒頭絡⇔ハミは『大勒銜』で微妙な制御を伝達できるために複雑な高等馬術などに使われ左右の上下から二本ずつ計四本の手綱が出ている。

*ギャグ頭絡。

1)各種頭絡と特徴:

①ギャグ頭絡Gag Snaffle Bridle;丸くなっている頬革が銜鐶を通じて手綱に直結している⇔銜身が上がって馬の口角への作用が強力に発揮される⇔手綱の操作で馬の頭頸挙上や逆に下方への伸展に効果が発揮される。

②銜なし頭絡Bitless Bridle;特別な用具で、馬の鼻梁に圧迫を加えて馬を制御する道具。鼻革の位置を下げれば下げるほど制御し易くなるが、下げ過ぎると呼吸をさまたげる⇔馬の口に外傷があり銜を使えない時や、新馬に銜調教をする段階の一つとして使用される。また、口が硬い馬や銜に全く反応しない馬にも使用する。

③大勒頭絡Double Bridle;大勒銜用と小勒銜用を装着し、小勒で方向と抑制の指示、大勒で馬の顎をリラックスさせ、微妙なコントロールを行う。馬場馬術用。

④無口頭絡Halters and Headcollars;主に繋ぎ索に用いられる頭部保定具。俗に《無口》、《寝張り》、《野繋》と呼ばれる。
*頭絡と曳き綱が一体化したもの⇒Halters。
*喉皮の部分にスナップが取り付けられていて、装着が簡単な頭絡単独のもの⇒Headcollarsがある。
*Headcollarsには、他に曳き綱と組み合わせて使い、装着時に頭頂部を外すタイプがある。

1-3無口頭絡halters and headcollars(図は競走馬の馬装具を参考):
*上段:曳き綱と組み合わせで使用する無口頭絡⇔喉革にはスナップを取り付けて装着を簡単にしてある。
*下段:曳き綱と組み合わせて使う無口頭絡⇔装着時に頭頂部をはずすタイプ。

⑤Dr.Cook’sハミなし頭絡:最近、乗馬関係者で普及し始めている。
*この頭絡はアメリカの大動物外科学教授のロバート・クック博士が開発した。
*ハミを使わずに馬を制御できる安全性の高い頭絡である。
*馬がハミを嫌がる、特に危険が大きいサラブレッドや頑固で扱いにくい在来馬には、この頭絡が有効である。
*Dr.Cook’sハミなし頭絡は、乗馬初級者が馬を安全に制御でき、かつ馬が嫌がらずに扶助に従ってくれる極めて有望な馬具であるとされている。

2)頭絡(水勒頭絡)の構造と名称:

1-4図の○Noと下記の説明文は一致する(図は競走馬の馬装具を参考)
①項革Head piece;馬の後頭骨と第一頸椎の間に位置するもの。銜を操作する際に銜の種類によっては頬革を介してその支点となる。
②額革Brow band;項革、頬革を正しい位置に保定するもの。頭の大きさに応じて長さの合うものを使用。
③頬革Cheek piece;項革に連結し、銜を吊るすもの。頭の大きさで長さを調節できる。
④鼻革Nose band;馬の口が開き過ぎないようにするもの。輪の大きさと位置が調節可能。装着の高さにより馬に対する効力が変わってくる。
⑤喉革Throat lash(アゴ革);項革に連結し、頭絡の脱落を防ぐもの。締め過ぎると喉を圧迫するので注意。
3)頭絡(水勒頭絡)装着時の手順と注意点

1-5図:頭絡装着図;装着は○Noの手順で行う(図は競走馬の馬装具を参考)
①馬の頭を越して手綱をかける。⇒項革(うなじ革)部分を右手に持ち(馬の左側に立ち)、銜を口のところに持っていく。喉革と鼻革は常にはずしておくこと。
②銜を左手で支えて、歯の噛み合せ部分に軽く圧しつける。⇒協力的な馬には口を開けて銜を受けさせる。口を開かない馬は親指を口角に入れて動かすと良い。次いで、片方の耳、更に他の耳を越えて頭絡をかける。
③タテガミを整えて、前髪を額革の上に出す。
④喉革を安全のために先に固定する。
⑤最後に鼻革を固定する。⇒額革が水平で、耳根部を擦らないことを確認する。⇒鼻革が水平になっている事を確認。必要があれば項革の下で項部の革を調節する。
⑥額革は指が一本入る長さのものを使用する。
⑦カブソン鼻革は頬骨の少し下の位置にくるようにし、輪の大きさは指が2本入るくらいに調節する。
⑧喉革は、喉を圧迫しないように指が数本入る長さで締めること。
2.銜Bitsについて:

①銜は、歯槽間縁に咬ませる馬具で、頭絡と連結して定位置に保定され、手綱と連結して騎手の指示を馬に伝える道具。

②銜には大きく5種ある(水勒銜Snaffles、大勒銜Curb bit、ペラムPelhams、ギャグGag snaffles、その他ハックモア等)。競走馬には水勒銜が使われる。

③銜は、頭部の7箇所のいずれかの部分に作用している⇒口角、歯根・はぐき、舌、口蓋、顎凹、鼻梁。

1-6図:銜の口内装着図(図は競走馬の馬装具を参考)
1)馬を制御するためのハミ・銜の変遷:

(末崎真澄・ハミの発明と歴史:神奈川新聞社、2004を参考に記述した)

①馬と人間との接点となる道具・馬具は、手綱、ハミ(銜)、鞍、鐙、更にこれらの留め具である面繋(おもがい)、胸繋、尻繋などがある。

②ハミは、馬具のなかでも基本的で欠かせないものであるが、他の呼び名には馬ハミ、轡(くつわ)、勒(ろく)などがある。

③人間の祖先が馬に出あったのは300万年前にアフリカに現れた[猿人]アウストラロピデクスで、馬は[快速の三指馬]と言われるウマ科のヒッパリオンである(同じ場所の地層・化石から発見されたことから推察)。

④【馬の家畜化の始まりは、ハミの発明にある】:最初は綱や革紐(かわひも)を馬の首、鼻に巻き付け下顎の下で紐を結び制御していたが以後⇒動物の骨や角を使ったハミへと変わっていった。

⑤骨や鹿角などを15~20㎝に切り、穴をあけて綱や紐で結び、ウマの頬側に置き頭部に固定した。

⑥ウマの口に棒や紐を通さないハミ(無口頭絡)は⇒ウマの制御機能が落ちることから、手綱で引く駄載用馬に使っていたのでは?と推察される。

⑦古代のオリエント地帯とエジプト(紀元前300~250年頃)では、馬車や二輪戦車を曳くロバやオナガーにウシと同じように鼻輪をかけていたようだ。

⑧以後、西アジアでヒッタイトが鉄製の戦車を利用し出したため、野生ロバの索引利用から⇒ハミは力の強いウマへの利用に進化していった。⇒それは、スピードをあげるために強力なハミが必要となり⇒戦車用の馬に丈夫な金属製のハミが必要となっていった。

⑨戦車用のウマを強力に制御するには金属製や青銅製のハミが求められる⇒棒状のハミ、⇒半折れ式のハミ、⇒加えて頬当となる鏡板と鑣(ひょう;ハミ留め)には内側に突起があり、ウマの頬に強力な刺激を生む造りになっていった。

⑩アッシリア騎兵のハミは⇒戦車での戦いから騎馬への戦いへと変化するにしたがい⇒スキタイの騎馬民族は⇒ハミの進化を加速させた。

⑪紀元前1500年ごろ、青銅器で知られる文化【ルリスタンのハミ】の発達⇒多彩で動物や怪獣、人間の手、ウマの造形などを鏡(頬当;ほほあて)につくって利用した。

⑫【ペルシアのハミ】紀元前522年~486年頃、青銅製のハミに(紀元前1000年~紀元前500年頃;ウマの口中にはいる部分が半折れで結ぶ形式が主流)改良⇒小勒ハミを更にきつくするために→ハミの端の縁を鋭くした⇔円板型鏡板を付け,責めハミとし、更に小勒ハミに短い鎖や滑らかなローラを付けて、ウマが口中で遊び、唾液分泌を促し⇒ウマの下顎を常にリラックスさせる工夫をした。

⑬更に進んで【ギリシャのハミ:頬を締め付ける鋭い突起のある鏡板や滑らかなハミの利用】⇒【エトルリア人、ローマのハミ:青銅製で鳥の嘴状の鏡板、ケルト人の馬の頬に強力に作用する大勒ハミの使用】⇒【中央ユーラシア人のハミの利用:ロシアの黒海地方の草原地帯(紀元前9世紀ごろ)の遊牧系騎馬民族のハミ:青銅製のハミと鑣(ひょう;ハミ留め)で、しかもハミは半折れ式で鑣は三孔の穴のあいたもの⇒これはハミが口から外れず、グラグラしない利点】⇒紀元前5~6世紀ごろからのハミは青銅製から鉄製へと移っていく。⇒【内蒙古のハミ:ハミと鑣を一緒に鋳造したもの】、【中国のハミ:金属製の強力な棒状のハミと鑣⇔戦車用に利用】、⇒【朝鮮半島のハミ利用:中国から青銅製の馬車具や馬面、馬鐸、ハミ、鉄製のハミなどをもたらせた。⇔その後、朝鮮半島が三国時代に(高句麗コウクリ、新羅シラギ、百済クダラ)、馬具は装飾品となり⇒乗馬の風習とともに日本へもたらされ、日本で優れた馬具の文化を開花させた】。

2)銜身と銜環について:

1-7図:水勒銜の基本構造=銜身と銜鐶のバリエーション=(図は競走馬の馬装具を参考)
(1)銜身;

①馬の口内に位置し、銜輪、手綱を介して騎手の合図が直接馬に伝わる部分。

②銜身の形状、大きさ、材質によって馬の口への当りの強弱が変わる。

③銜の長さは、馬の口に合うものを使用。長過ぎると下顎をはさみ込み中央部が突出して口蓋を傷つけるし、短過ぎると口角を傷つける。

④銜身の形状による分類;通常の中折れ銜、棒銜、板銜、その他。

⑤銜身の材質による分類;通常の金属銜、ゴム銜、革銜、その他。

(2)銜鐶:

①銜身の両端の馬の口外に位置する部分。

②頭絡の頬革と連結して、銜身を口内の正しい位置に保定すると同時に、手綱と連結し、騎手の指示を銜身に伝えたり、それ自身が口角を圧したりする作用。

③様々な形状がある: D銜;通常の輪状のもの、エッグ銜;馬の口を傷めない。枝銜;銜鐶が馬の口の中に入ってしまうのを防ぐ。銜がずれないので制御し易い。その他。

④銜輪の一体化した銜《ルーズな遊動や固定したもの》。

(3)銜の選択と注意点

①騎乗目的、馬体構造、感受性、調教程度などで選択。
②使い方を間違えると目的を達成できない。
③銜を使用する側が、銜の特性を良く理解して使うこと。
④銜受けの悪い馬→強力な銜の考案⇒力による制御なので、馬がこれに対抗する力をつける。
⑤悪循環を断つためには、可能な限り調教して馬を制御する制御方法を考えること。

3)銜の種類(水勒銜)
(1)材質による銜身の種類;

①ハッピーマウス銜Happy Mouse Snaffle Bit;合成樹脂でくるんだ水勒銜。口への当たりが柔らかく作用するので、口が軟らかく、敏感な馬に使用。
*ハッピーマウス棒銜Happy Mouse BAR Eggbut Bit

②アップルマウスD銜Apple Mouth D-Bit;合成樹脂の中にアップルフレバーを配合。

②銅銜 Cupper Bit;馬が銅の甘味を感じて、より口に馴染むようになる。

③ゴム銜:⇒口角などに傷のある場合や敏感な口の馬に使用。

1-8左図:材質による銜身の種類;(図は競走馬の馬装具を参考)
左上段:ゴム銜rubber Snaffle Bit;通常の銜身にゴムをまくことで、口角への当りを更に柔らかくする。
左中段:Dゴム銜 D Cheek Rubber Snaffle Bit;D銜の銜身をゴムで巻いたもの。
左下段:両枝ゴム銜Full Cheek Rubber Snaffle Bit;
右上段:ゴム棒銜Straight Rubber Snaffle Bit;非常に敏感な口の馬に使用。
右中段:革銜Leather Covered Bit;金属よりも馬の口への当りが柔らかい。
右下段:プラスチック銜Plastic Bit;金属よりも馬の口への当りが柔らかい。
1-9右図:富士サファリパークに咲く桜
(2)形状による銜身の種類;

①棒銜Straight Bar Snaffle Bit;銜身が中折れしない棒状の水勒銜。水勒銜より舌に対する圧迫が強く、口に等分に圧迫が加わる⇒若い馬、敏感な馬に使用。綿密な操作は不可。

②ムーランマウス銜Mullen Bit;銜身が半月状になっていて、舌に対する圧迫が棒銜より緩和している。*ムーランエッグ銜Mullen Eggbut Bit。

*ハッピーマウスムーランエッグ銜Happy Mouth Mullen Eggbut Bit。

③コレクション銜Collection Bit;銜身に舌寛が付いている棒状の水勒銜。馬が舌を出すのを予防。

(3)銜身と銜鐶の両方に付属品がある銜;

①リング銜Ring Bit;舌を押さえるリングが付属する水勒銜。銜鐶(枝)にリングを保持する輪が付いている。⇒左右の制御を口角ではなく、下アゴでするので、口角にも優しい。⇒リングにより舌が押さえられるため、馬の舌が銜の上を超えられない。

②片枝リング銜Half Spoon Check Ring Bit;銜とリングが馬の舌の上にくるようになっている。少し気ままで、引っかかる馬、舌を越し、正しい銜受けをしない馬に使用。
*《リング銜使用時の注意》;
装着時にリングが裏返しとなり、銜身の後側になってしまうことがある。この場合、銜身は中折れができなくなり、本来の機能を損なう恐れがあるので注意。

③ねじり銜:
*Twisted‐jointed Snaffle Bit;
口への当りが強く、制御力が強い。⇒口角を傷つける可能性がある。
片ねじりTwisted‐jointed Eggbutt、両ねじりDouble Twisted‐jointed snaffle Bit、針金両ねじり銜Wire Snaffle Bitがある。

④梃銜てこばみ:銜身を外に延長した銜
銜身を口の外側に延長することにより、テコの作用が加わり、手綱の操作が通常より強力に口角へつたわる⇔内外によれる癖のある馬に使用。

1-10左図:銜身と銜鐶の両方に付属品がある銜(図は競走馬の馬装具を参考)
左の上、中、下図:二挺針金ねじり銜
Double Twisted‐jointed Wire SnaffleBit;針金を編んだ2対の銜身。 
右上図:両枝二挺針金ねじり銜
Double Twisted‐jointed Wire Full Cheek Snaffle Bit 
右中図:スリーボールネック銜Three Ball Neck Snaffle Bit;銜身に3個の金属ボールが鎖状に連なり、どの部分でも折れ曲がるので、口角への当りが非常に強いが、
右下図:金属ボールを用いているので当たりが軟らかい。
1-11左図:駿河平自然公園に咲くサクラ

1-12左図:梃銜(てこばみ)⇔銜身を外に延長した銜(図は競走馬の馬装具を参考)
左上図:ブリストル式D板銜Dr.Bristol Dee Cheek Snaffle Bit;通常の中折れ水勒銜よりも舌の上への加圧が弱く、舌を越す癖のある馬の矯正に効果。
左中図:フランス式板銜French link Eggbutt Snaffle Bit;舌を越す癖馬の矯正に効果。
左下図:スプーンビットSpoou Bit;舌を越す癖のある馬の矯正に効果。
右上図:梃銜(てこはみ)Extention Ring Snaffle Bit;制御力が強く、突進癖、猛進癖の馬に使用。
右中図:梃革銜Leather Covered DoubleExtention Ring Snaffle Bit 
右下図:スライデイングマウスビットSliding Mouth Bit;馬がヨレルことによって、左右どちらにでも自由なテコの作用が期待できる。
1-13右図:富士花鳥園:水面に浮かせた花、花・・・・
(4)鼻革との相乗効果を期待した特殊な銜;

①ジョーサイピン・オーバーチェック銜Joe Thyben Overcheck Bit;全く手に負えないほど引っかかる馬に使用。
②イングリッシュ・ランナウト銜English runout Bit;外にヨレたり、内に刺さったりする癖のある馬だけに使用。
③ボタン銜Button Bit or Roy miller nob;内側のシャフトに小さなボタンがあって、このボタンが馬の顎を圧迫し、馬がササッタリ、ヨレたりするのを防ぐ。
④ハックモアHackmore
*銜なし頭絡とともに使用するもので銜身がない。銜枝がテコの作用をし、鼻革が鼻梁を圧迫することにより、馬を制御する道具。
*鼻革の位置を下げれば下げるほど制御し易くなるが、下げすぎると呼吸を妨げてしまう。
*主に馬の口に外傷などがあり銜を使えない場合、口が非常に固くなってしまった馬、銜に全く反応しない馬に使用。

4)銜鐶の形状による分類=

1-14左図:銜鐶の形状による分類(図は競走馬の馬装具を参考)
上段:水勒銜Snaffle bit;最も標準的な中折れ銜身。手綱の操作により連結部の屈折度が変わり、制御力は相対的に穏やかに馬に伝わる⇒太さに種々あり、細いもの(細銜)は制御力が強い。
中段:エッグバット銜Eggbutt Snaffle Bit;銜身と銜鐶の連結部分が卵型をしている⇒銜身太く、口角が丸く馬の口を痛めにくい。
下段:D銜Dee Chaak Snaffle Bit;銜鐶のストレート部分が枝銜と同じ役割。
孔付D銜Dee Cheek Snaffle Bit with Slot;銜身が馬の口の中で正しい位置にあるようにしたもので、銜の保定が非常によい。
1-15右図:大沼公園:高浜虚子の径の湖面
(1)枝銜

1-16左図:枝銜(図は競走馬の馬装具を参考)
上段:片枝銜Half Spoon Check Snaffle Bit;左右にフラツク様な馬に有効。
中段:両枝銜Loose Ring Full Spoon ・Check Snaffle Bit;片枝銜より馬への影響力がり強い。
下段:両枝銜Full Check Snaffile Bit;前二者よりもさらに強い影響力。
1-17右図:大沼公園:高浜虚子の径付近の湖面
(2)ペソア銜【エレベーション銜】

Pessoa Bit;通常の水勒銜の銜鐶の上下にリングが付属し、手綱が連結する位置を下げることで制御力強くし、馬の頭を下げる作用もある。

(3)特殊な銜

1-18左図:ペソア銜【エレベーション銜】(図は競走馬の馬装具を参考)
上段:ペソア1リング銜(ツーリングビット)銜で、より制御力が強い。
中段:ペソア2リング銜(スリーリングビット);舌のリングが2つあるペソア
下段:ユニバーサルビット;口向きの悪い馬に使用。
1-19右図:特殊な銜(図は競走馬の馬装具を参考)
左上図:スネーク銜Snake Bit;騎乗者が手綱を引くと下顎のまわりに圧力がかかる。
左中図:ブレーキング・ビットStraight Bar breaking Bit with keys;新馬調教用に銜身に遊具を付けたもので、銜に慣れさせるために使用。舌越癖にならない作用がある。
左下図:両枝ブレーキング・ビットFull Cheekbreaking Bit With keys;新馬調教用に使用。
右上図:チフニー銜(ハート銜)Chifney Anti‐rear Bit;うるさくて、曳き馬をするのに苦労する馬やふざけて立ち上がる馬に使用。パドックから出る時は外す。
右中図:和製洗い銜Japaneese Bit;繋ぎ索用の銜。
右下図:キネトン鼻革kinetou noseband;
5)水勒銜頭絡の構造・部位名称 及びその他の銜:

1-20左図:水勒銜頭絡を解いた場合の部位名称:Parts of the bridle(図は競走馬の馬装具を参考)
1-21右図:その他の銜(図は競走馬の馬装具を参考)
上段:①大勒銜 Curb Bit:
*頭を下方に向ける力が強力に働く。
*通常は小勒銜と同時に使用する。
*小勒銜で抑制と方向を指示し、大勒銜で顎をリラックスさせるために使用。微妙な操作が可能で、馬場馬術などの乗馬に使用する。
中段:②ペラム銜 Pelham Bit;
*勒と水勒の中間的存在の銜。
*手綱を2本使用するが、連結革をつけて1本手綱での使用が多い。
*口向きの良くない乗馬に使用。
下段:③キンブルウイック銜 Kimberwick Pelham Bit;
*ペラムの一種、1本手綱で使用。 
*手綱を操作する前に拳こぶしを低くすると手綱がD字状の銜枝を滑り落ち、頭を下げる作用が働く。
*口向きの良くない乗馬に使用。

次回は銜、鼻革、手綱等について呟いてみたい。

馬病理医の呟き=やさしい馬学講座 Ⅹ

馬装具Ⅱ =銜・鼻革・手綱等について=

馬をコントロールするための装具として、銜・はみ、鼻革、手綱 等々がありますが、ここでは、これらにまつわる諺を含め、主に現在使用されている各種装具を挙げ、その利点や欠点等を列挙してみたい。 

鞭と鐙にまつわる諺・言葉

*捨て鞭(すてむち):馬の尻に鞭打つことを言う。

*『見せ鞭』は鞭を振り上げただけや、逆さにもって馬に見せながら追う、鞭での気合い入れ。

*駑馬に鞭打つ(どばにむちうつ):努力する意味に使う。駑馬は謙遜語にもなっている。
駑馬にいくら鞭を打っても、優駿にはならないが、良血馬に鞭打てば、強い馬になる可能性が高い。

*鞭の加持(むちのかじ):競馬に勝つように神仏に祈ることを言う。
鞭(策・苔・むちと同じ)は、馬や牛を打って追い進めたり、罪人や自分の意に従わない者を打ったりするのに使う細長いもの。

*鐙;諸鐙(もろあぶみ)を合わす:
左右の鐙のことで、馬に乗って疾駆させる時、左右のアブミをあおることを言う。

1.銜と鼻革と手綱との関連性:(図Ⅱ-1)

ギャグGag Snaffle Bit。キネトン鼻革Kinetou Noseband。グレイクル鼻革Grakle Nosebandの3種がある。(図は競走馬の馬装具を参考)

①ギャグGag Snaffle Bit
*水勒銜の特徴である口角への作用を強化したもの。
*馬は頭頸全体の抵抗を排除して下方へ伸展させるという逆の効果も作り得る。
②キネトン鼻革Kinetou Noseband;*騎乗者が手綱を引くと銜が引か
  れる。同時に鼻革が鼻梁を圧迫する。引っかかる馬の制御に効果。
③グレイクル鼻革Grakle Noseband;
*フイギュア・エイトと同じだが、上の輪と下の輪を顎下で連結しており、2つの輪が広がるのを防いでいる。
1)銜吊り・舌しばりBit Holder/Tanguetie:

①銜吊りは、銜を上顎に引き上げる作用があり、馬が銜を越して舌を出すのを防ぐ(一般に舌を越すと言う)。

②銜の位置を正しく保つ効果あり。

③一端を頭絡の項革に固定し、馬の鼻梁上を通じて両側の銜鐶内側の銜身部分に連結する。

Ⅱ-2左図:銜吊りと舌しばり(図は競走馬の馬装具を参考) 
左上図:銜吊り(シュアー・ウイン・オーバーチェックSure‐Win Overcheck;オーストラリアン・チーカーとも呼ばれ、最も良く使われ、効果がある。ゴム製で伸縮性に富み、調節可能。
左下図:ビットホルダーCurb Straps;銜がずれないようにするバンド。顎の下で左右の銜鐶に取り付ける。
右側図:舌しばりTongue Tie;
①あらゆるタイプのオーバーチェックや銜を使っても舌を越す癖が治らない場合に行う。
②レースで舌を引っ込めて気管を塞いでしまう馬や、DDSPを発症しやすい馬に有効。③
一見、馬に苦痛を与えるように思えるが、実際はそれほど苦痛を与えるものではない。
Ⅱ-3右図:トラののどかな昼寝:富士サファリパークにて
2)鼻革Nosebands:

①口が開き過ぎないように使用《馬の口を閉じるために種々の鼻革が考案》、あるいは頭絡を確実に装着する目的に使用。

②鼻梁のかなり低い位置に装着する。

③各種鼻革:カブソン鼻革(フランス鼻革)、ドロップ鼻革(ドイツ鼻革)、フラッシュ鼻革(コンビ鼻革)、フイギュア・エイト鼻革、グレイクル鼻革、レバー鼻革などがある。

Ⅱ-4図 主な鼻革:(図は競走馬の馬装具を参考)
3)鼻革nosebandsの各装着図:(図は競走馬の馬装具を参考)

Ⅱ-5図:鼻革の装着図:
左上図:カブソン鼻革(フランス鼻革):Cavesson Noseband;頭絡を正しい位置に装着させ、頭絡が破損した時にはずれないようにしている。
左下図:ドロップ鼻革(ドイツ鼻革):Drop Noseband;口が開き過ぎないようにする効果あり。水勒銜の位置よりも鼻端側に装着する。⇒鼻孔を押さえて呼吸を阻害しないように注意。
右上図:フラッシュ鼻革(コンビ鼻革)
Flash Noseband;銜をはさんで上と下とで口を締めることで馬の口が開き過ぎないようにする。⇒馬の呼吸阻害はほとんどない。銜も口内の定位置におさまる。
右中図:フイギュア・エイト鼻革Figure Eight Noseband;コンビ鼻革と作用はほぼ同じ。
右下図:グレイクル鼻革;フィギュアとほぼ同じ。
レバー鼻革;金属製のレバーの両側に顎革が2個付いていて、馬が口を開こうとするとレバーが作用し、逆に口が締まる。口を開こうとしたときのみ作用する。
4)鼻革との相乗効果を期待した銜

Ⅱ-6左図:鼻革との相乗効果を期待した銜(図は競走馬の馬装具を参考)
①ロックウエル銜Rockwel Bit;効果はキネトン鼻革と類似。
②サイテーション銜CitationBit;舌越しが完全に出来ない銜。
③ニューマケット銜Newmarket Bit;若馬の調教用。
*ノートン銜Norton perfection Bit;通常の銜身の上に鼻革と連結した小さな銜がもう一つ付いている。引っかかる癖の馬を押さえるのに使用。
Ⅱ-7右図:頬あて(図は競走馬の馬装具を参考)
上段:ビット・ガードBit Guard or Rubber Cheek Piece;ゴム製の頬あて。口角の保護や左右にヨレル馬が口を開け、銜鐶が口の中に入るのを防止。当たりが柔らかいので銜を快く受け入れる。
下段:イタイタBit Burr;剛毛の植え込みや固い突起を右につければ右へのヨレを防ぐ。片側のみ使用すること。
5)頬あてCheek Guard;

①2種類あり、一つはビットガードで、馬の口角の保護や銜鐶が口の中に入ってしまうのを防止。他方はイタイタで、頬あての内側に剛毛を植え込んだものや硬いゴムの突起をつけたものあり。
②馬が内にささったり、外にふくれることを防止。
③銜鐶の銜身内側の銜身部分に装着する。

6)遮眼帯Blinkersと手綱rein及び銜鐶への接続の仕方:

①遮眼帯は、馬の意識をレースや調教に集中させ、外界の様々な情報に惑わされずに走るための補助装具である。

②JRAのレースでの使用は出馬投票時に届出が必要。

③主にハーフカップブリンカー、フレンチカップブリンカー、フルカップブリンカーなどが使用される。

Ⅱ-8左図:遮眼革(図は競走馬の馬装具を参考)
左側上段:ハーフカップブリンカーHalf Cup Blinker;前のカットが小さく、視野が少し開ける様になっている。後ろが全く見えないもの、後続馬が抜く際に驚かないよう後ろに隙間や丸い穴が開いているもの等がある。
左側中段:フレンチカップブリンカーFrench Cup Blinker;カップ状ではなく、フードから真っ直ぐ出ているもので、ハーフカップブリンカーよりも視野が開けている。
左側下段:フルカップブリンカーFull Cup Blinker;前がカットされていないので、視野の制限作用は強い。馬は後ろを全く見ることができない。特別に気の小さい馬に使用。
Ⅱ-9右図:手綱⇔図の№に一致(図は競走馬の馬装具を参考)
①通常の革製手綱plain leather rein
②革編み手綱laced leather rein.
③ゴム製手綱rubber covered rein.
④布手綱weebbing rein
⑤滑り止めのついた布製手綱weebbing rein with handgrips

Ⅱ-10左図:銜鐶と手綱の接合の注意点(図は競走馬の馬装具を参考)。
Ⅱ-11右図: グラントシマウマ:富士サファリパークにて
7)迅速に解くための結び方 a quick release knot:

Ⅱ-12左図:迅速に解放する結び方(図は競走馬の馬装具を参考):
Ⅱ-13右図:わが家のアジサイの花:

①馬はタイ・ロープ(tie rope)あるいはラック・チエーン(rack chain)で繋ぐが、その際にはロープやチエーンの一方の端を鉄輪についた紐輪に結び付けなければならない。紐輪はすぐに、また容易に切れるので、馬がひっぱっても頭絡が壊れたり馬が傷つくのを防止することができる。更に馬が迅速に解放する必要がある場合は紐輪を切ることができる。そのためには、迅速に解放するロープの結び方が必要である。

次回は、鞍とその付属品について呟いてみたい。

馬病理医の呟き=やさしい馬学講座 11

馬装具 Ⅲ =鞍とその付属品について=

古くから優秀な馬を選別する技能を持ち合わせている目利きのバクロウ達により売買された馬達を調教・馴致し、家畜・競走馬・乗用馬として作り上げる過程で、馬の背に乗るための装具の一つとして、目的に沿った鞍や付属品を使い完成した馬に作り上げてきた。また、馬の背に跨る諺としても多くの言葉が伝えられている。ここでは、各種鞍の特徴を知り、人間の目的に合致した鞍を使い良質な馬を作ろうではありませんか!!

個体識別/博労に関係する諺・言葉

*馬博労・馬伯楽(うまばくろう・うまはくらく):
博労とは、伯楽から転じた言葉で、馬の善悪を鑑定する人、馬の病を治す人、馬の売買、斡旋(あっせん)をする人のことを言う。
伯楽とは、中国古代の人で、馬を鑑定することが巧みであったと言われている者のこと。
日本での馬伯楽は、近年では[相馬の神様]と言われた故岩渕真之(いわぶちまさゆき);着眼点は皮膚が乾燥して胸広く深く、関節強く体との釣り合いがあり、姿勢良く四枝真直ぐで、運歩軽快で動きよい馬、が理想的な競走馬とした。
近年の馬博労は、福島の佐藤伝二氏、JRAの小川諄(じゅん)氏などがいる。

*下馬評(げばひょう):
もともと主人を待って居る者同士が、馬の良し悪しを言い合っている様を言う。下馬評は野次馬にとってこれほど楽しいものはないが、馬の世界では、相馬にはオールマイテーの者はなく、競馬予想も下馬評が適中しないところに面白さがある。

Ⅲ-1左図:富士花鳥園で寄り添うミミズクの兄弟。Ⅲ-2右図:富士花鳥園:仲良しのインコ。
鞍に関わる日本の諺・言葉

*鞍上人無く、鞍下馬無し(あんじょうひとなく、あんげうまなし):
騎乗者と乗馬とが一体となったように見えるほど、巧みに乗りこなすさまを言い、『人馬一体』とも言う。馬は個体ごとに姿勢や肢勢も違い、頸の動き、肢の運び、反動が違うので、馬術に熟達した人が同じ馬を乗りこなさない限り、人馬一体にはなかなかならない。

鞍替え:
一般的には、職業をかえることを言っているが、元は遊女や芸者が他の店に勤め替えすることを言う。
鞍は、欧米で使われるようになったのは明確ではないが、3~4世紀頃、騎馬民族が馬を御すようになってからであろう。

背・脊椎・乗馬にまつわる日本古来の馬言葉

*明荷馬(あけにうま):
昔、民間で嫁を乗せる馬のことを明荷馬と呼んだ。婿方(むこ)が馬を用意し、明け荷を馬の背の両背・左右に分けて着け、その上に座布団を敷いて嫁を乗せ、婿の家まで連れていった。
現在は、相撲の明荷があり、十両以上の関取のマワシや化粧マワシをいれた長方形の箱を付け人が運ぶ日本古来の伝統文化の風情が残っている。

*馬には乗ってみよ、人には添ってみよ:
物事は実際に経験してみないとわからないことの意味。馬の素晴しさは乗ってみて初めて分かることである。

*馬の背をわける:
馬の背の片方には雨が降り、片方には降らない意味。夕立などが、ごく近い区域でここには降り、あそこには降らぬ状態を言う。

*駄(だ):
馬に荷を乗せて送る事。または乗せた荷物のことを言う。
駄馬(だば)は、荷馬(にうま)または雑役馬とも言う。馬をつなぐ馬房を『駄屋』と呼び、荷物を載せる鞍を『駄鞍(だあん)』とも言う。

*木馬(もくば):
木で馬の形を作ったもの。
乗馬の稽古、遊戯、神社への奉納などに用いる『鞍掛馬』。昔の拷問の道具の一つで、木造の馬の背形のものに罪人を跨(また)がせ、両足に石を吊り下げた。

*馬上盞(ばじょうさん):
馬上で酒を飲むのに使う盃を言う。馬上盃(ばじょうはい)とも言う。

*行掛(いきがけ)の駄賃(だちん):
問屋へ駄馬を引いて行くついでに、荷物を馬につけて運び、運賃を自分の所得とすることから、事のついでに他の事をするたとえとなった。

*中馬(ちゅうま):
江戸時代、信州で宿場問屋を経ないで、荷主と直接契約によって荷物を運んだ馬のこと。

*乗打(のりうち):
馬やカゴに乗って、そのまま貴人の前を通り過ぎることを言う。大名といえども、カゴに乗った貴人の前を過ぎる時は会釈やお礼をするのが習慣になっていた。

Ⅲ-3左図:富士花鳥園:ホクシャの花。 Ⅲ-4右図:山のホテルからの富士山:

*乗切(のりきり):
兵法で敵が固まって逃げる時、騎馬でその中間を乗り切って散り散りにし、味方に敵の首を取らせることを言う。中央突破のこと。

*背・馬の籠抜け(馬のかごぬけ):
窮屈で困ることのたとえである。
人の乗る籠に馬を乗せたら底が抜けるに決まっているが、固定観念にとらわれない見事な逆転の発想である。

*『牛を売って馬を買う』、『牛を馬に乗り換える』:
 騎乗用として足の遅い牛を売った金で、騎乗にすぐれた馬に買い替えること。悪いものを売って優れたものに取り換えることのたとえ。牛と馬の価値化の違い⇔牛は肉用、乳用、皮用に、馬は駄用、馬車用、騎乗用に価値を求めた。⇔日本での騎乗の風習は5世紀なってから始まったとされ、特に奈良~平安時代にかけ武士が台頭し、騎乗の良否は戦況に影響し、馬は特権階級の権威の象徴となった。

*『馬に乗るまでは牛にのれ』:いきなり速い馬に乗らないで、まずはのろい牛に乗って馴れるということ。⇒出世するには段階があるというたとえ。⇒動作の鈍く性質が沈着である牛を扱ってから馬に慣れろという意味。

*『牛は水を飲んだ乳とし、蛇は水を飲んで毒とす』:
同じものでも使い方によっては毒にも薬にもなるというたとえ。⇒使いようによる意味では、『癖ある馬に乗りあり』、『蹴る馬も乗り手次第』『杓子馬(しゃくしウマ;のろい馬で、駄馬のこと)の主が使えば歩く』。

*馴れ⇔事故:人工保育で育った動物は油断ができない。
➢動物と飼育員が互いに遠慮がなくなっていく。
➢動物は、人間世界に深く入り込み、自分をそのグループに動物と思い込んでしまい遊びを今までの付き合いの延長線上で考えてしまい、彼らが満足を得るところまでいけないので、遊びの途中で不意に攻撃に変わってしまう。
➢どんな馴れた動物でも一定の距離(物理的、心理的)を保つことは、動物との付き合いの上で大切なことである。

1.鞍とその付属品について:

①鞍、腹帯、鐙、鞍下ゼッケン、鞍吊りと胸がい、馬衣、保護馬装具(肢の保護、肢巻、輸送用、保護具、その他の馬装具(調馬索用具)、特殊馬装具(視野や意識をコントロールする用具、マルタンガール等)、その他(鼻捻子の使い方、蹄鉄)などがある。

1)鞍 Saddles

①人を背に乗せるための馬装具には、先ず鞍がある。鞍は使用目的(障害、馬場、ショー、競走、軍、総合鞍)に応じて色々なタイプのものが考案されている。

②競走馬の鞍は、前方騎坐が可能なように【あふり革】が前方へ伸び、極端に鐙を短く乗るように工夫されている。しかも、軽量化の目的で小さく作られている(約300g~2kg)。

③適した鞍の選択;
*騎手の重量が筋肉の障害や故障を起こし易いので、騎手やウマの背に合った鞍を選択。
*鞍骨があり、且つ鞍褥(あんじょく・にく)の充分ついた鞍を選択⇔ウマの背の保護。

④騎手の騎乗スタイル;
*天神乗り;以前は鐙を長くして鞍にまたがり、背中を真っ直ぐに伸ばしたスタイルである。明治時代から伝わっている騎乗法で、現在の障害レースなどでも見られる。
*モンキー乗り;鐙短く、背中を丸め、ウマの負担を軽くする現在のスタイル(アメリカ人騎手のジェームス・スローン(1874~1933)が考案)⇒保田騎手が日本に紹介した騎乗法である。
⑤競走用の鞍の目方;3斤・鞍と言って約1.8kgの革製か、最近ではビニール製の数百グラムから1kgの鞍まである。調教用には5斤鞍で約3kgの革製のもの。

Ⅲ-5左図:ヴァンジ彫刻庭園のサクラ: Ⅲ-6右図:左側図:レース鞍(Racing Saddle)。右側図:調教鞍(Exercise Saddle) (図は競走馬の馬装具を参考)

Ⅲ-7左図:富士花鳥園:インコは何を狙っているのか。 Ⅲ-8右図:男爵イモの花:
2)鞍(Saddles)の各種

Ⅲ鞍-9図:Saddles:用途によるいろいろな鞍(図は競走馬の馬装具を参考)
3)鞍の部位名称と構造

Ⅲ-10図 鞍の部位名称:(図は競走馬の馬装具を参考)

Ⅲ-11図 鞍の基本構造模式図と名称:(図は競走馬の馬装具を参考)

Ⅲ-12左図:チータの狙っているものは? 富士サファリパークにて。
Ⅲ-13右図:大沼公園:湖月橋付近の湖面

Ⅲ-14左図:ライオンの昼寝:富士サファリパークにて。
Ⅲ-15右図:富士花鳥園:ホクシャの花。

Ⅲ-16図 鞍Saddlesと頭絡等の模式図および名称:(図は競走馬の馬装具を参考)
4)鞍に関するノウハウ=西洋鞍と和鞍=

①鞍は使用していた民族によって材料も形もいろいろ。日本では芸術性の高い『大和鞍:和鞍』があり、アメリカではカウボーイのウエスタンサドル。競走用には革製の3キロ前後のもの、調教用には5キロ前後のものが使われている。乗馬が上達すると、『鞍はまり』が良くなってくる。これを『鞍強;くらづよ』といって鞍に尻が座って容易に落ちないさまを言う。

②西洋鞍と和鞍:
馬に騎乗する際に使用する馬具には鞍(くら)と鐙(あぶみ)があり、日本に馬具が伝えられたのは古墳時代頃と言われている⇔埴輪馬(はにわうま)に馬具が見られることからも理解される。
*日本に伝わった鞍は『唐鞍・からくら』と呼ばれるが、鎌倉時代には日本独自の『和鞍・わぐら』が開発されている。
*『和鞍』は、唐鞍に比べ前輪(まえわ)や後輪(しずわ)が直立(後輪はやや傾斜)し、馬上での姿勢が安定するようになっている。
*菅野茂雄(2015):和鞍;日本甲冑武具研究保存会 日本ウマ科学会 第28回学術集会 講演要旨集によれば、以下の①~⑤とされている。

①和鞍は、武士が戦場での合戦で使用した軍陣鞍(鎧兜装い騎乗)と、戦国時代から江戸時代そして幕末まで侍が飼養していた水干鞍がある。

②水干鞍は木材を中心に作られた和鞍で、前輪、後輪、居木には左右の4つの部品からなり釘を使わずに糸絡みにすることで、異常な力がかかった時は糸が切れて鞍の部材が破損することを防いでいる。

③前輪と後輪は樫の木などの堅い木の曲がりを利用し、居木は水木などで樫の木よりも柔らかい木を利用している。

④軍陣鞍の形の特徴:水干鞍に比べて前輪と後輪の高さがあり、居木は前後に短い、装飾は螺鈿(ラデン・貝のかんざし)、平文(銀や真鍮板を文様に切り埋め込み)、革包み、黒漆などあり。

⑤水干鞍の特徴と種類:軍陣鞍との大きな違いは形(海有水干鞍、海無水干鞍、布袋鞍など)の違いと、製作者の名前や年号を墨書き黒漆書き彫刻などをしてブランド化し、高位の侍や大名の持ち物となっていたが、一方では、偽名鞍も多くでた。装飾には、蒔絵や家紋を金泥書き、螺鈿、竜や幾何学文様彫刻、卵の殻の貼り付け、などがある。
*『西洋鞍・ウエスタン鞍』は、前輪と後輪があまり突出することなく、小さいため安定感はなく、バラランスが取りづらいが、その分、馬上で横や後に体をひねるなどの自由な動きが容易になっている。椅子に例えるなら、和鞍は背もたれと肘置き付きのイスで、西洋鞍は背もたれのないイスであろう。
*日本人が背もたれのない西洋鞍に慣れるのに苦労したようで明治天皇が考案した『和洋折衷鞍・わようせっちゅうくら』などがある。

5)レース鞍の特徴 《全体的に小型軽量である》

Ⅲ-18図 レース鞍の特徴:軽量化した小型の鞍(図は競走馬の馬装具を参考)
6)装鞍での留意点;

*ウマの背によく適合し、特に鬐甲や背骨を圧迫しないこと。
*ウマの背に均等に接触し、局部的な荷重がないこと。
*ウマの肩の運動を妨げないこと。
*ウマの腰に負担を与えないこと。

7)鞍下ゼッケン Numnahs and saddle pads:

①ウマの背中を保護するとともに、鞍の汚染を防止するために鞍の下に敷くクッション材のこと。

②背中を痛める原因は?;
*鞍また鞍下ゼッケンの不良。
*馬体構造。
*鞍の位置不良。
*騎手の乗り方不良。
*汗が浸み込んで固くなったり、汚れている鞍下ゼッケン使用の不注意。

③本来の使用目的以外に、鉛板をいれるポケット(負担重量)の装着、番号、単に装飾のためのもの等がある。
*スポンジゼッケン;競走用。軽量、弾力に富む。
*鞍型のフェルト・ゼッケン;乗用馬用。標準的なゼッケン。
*鉛板携帯用ポケット付きゼッケン;レース用。負担重量の鉛板ポケット付
き。
*羊毛製ゼッケン;背中への当りが柔らかい。乗馬用。
*和製鞍下;背中の部分が割れて、俗にダルマや背割れと呼ばれるもので、綿を布で包み鞍型に縫ったもの。乗り運動時や鞍傷のあるウマに使用。
*鞍下毛布;調教時に使用。毛布を適当な大きさに折りたたんで鞍下として使用。
*番号ゼッケン;騎乗中のウマの区別をつけるためのもの。背中の保護効果。
*メッシュゼッケン;滑り止めを目的としたウレタン製のメッシュパッド。

8)腹帯 Girthsとは:

①ウマの背に正しく鞍を固定するためのもの。
②適度な強さで締めなければ鞍変位(鞍ずれ)を起こすので注意。
③締め過ぎるとウマに苦痛を与え、動作の妨げになるので注意。
④材質や装着の位置が悪いとウマの腹に擦り傷をつけてしまうので注意。
⑤材質には、綿布、皮革、ナイロン、ゴム布、これらの組み合わせ等がある。

Ⅲ-19左図:腹帯Girthsの各種(図は競走馬の馬装具を参考): 
①Webbing girth;競走用腹帯;カンバス製で、尾錠2個付きと1個付きの2本の組み合わせ(下腹用と上腹用)で使用。⇔伸びる心配はないが、馬体への密着性でElastic girthより劣る。
②Atherstone girth;ウマの肘の部分が擦傷を起こさないように細く作ったもの。
③Balding girth;革を3本に切ってウマのひじの部分が細くなるようにしたもの。
④Cotton string girth;調教用腹帯;綿紐を組み合わせて帯状にしたもの。⇔簡単に洗えるし、伸びる心配がない。丈夫で長持ちする。
⑤Webbing girth, elastic insert;馬体への密着を均一にするために、両端にゴム布を結合したもの。
⑥Elastic girth;ゴム布製で下腹帯と上腹帯の2本の組み合わせで使う。布製もある。
⑦その他に、腹帯カバーがある。⇔腹帯が接する部分に皮膚炎、擦過傷等が発症した場合や、その予防に使用する。羊毛製やゴム製がある。
Ⅲ-20右図:富士花鳥園:ホクシャの花。
9)鞍と連結している鐙革と鐙

①鐙革Stirrup leathers:
*鐙革 は、鞍と鐙を連結するもの。
*形状に大差がない。
*劣化したもの、油分がなくなったものの使用は、騎乗中に切れ、事故につらなるので、常に点検や手入れが必要。

②鐙 Stirrup irons:
*鐙は、騎手の足を乗せるもので、軽量で耐久性に富んだ材質からなる。
*破損すると事故になる。
*鐙革とおしの部分の破損が多い
ので、常に点検が必要。

③鐙の登場〔清水唯弘(2015);騎馬文化研究者、日本ウマ科学会 第28回学術集会 講演要旨集より〕 
*足を置く現在のようなタイプは、紀元後4世紀初期(西暦300年頃)の中国華北の埋葬品のものが最も古いとされている。
*その後、東アジアで広がり、西方に向けては中央ユーラシアで7世紀前後
よりみられるようになり、東ヨーロッパで8世紀頃より、西ヨーロッパで
は9世紀頃からの出現。
*日本古代の鐙は、いわゆる輪(リング状)のものと、壺型の形式でスター
トしている。時代と共に変化して世界でも独特な形(現在でも神社祭礼の
騎馬に見るスリッパ状の鐙)となっていった。

Ⅲ-21左図:鐙革と鐙(図は競走馬の馬装具を参考)
左上段:調教鞍用鐙革:耐久性を重視し、丈夫だが重い。
左中段:レース鞍用鐙革;
軽量化のために、細く、耐久性にやや劣る。
左下段:標準型鐙;ステンレス製で適度な重量で、耐久性に富んでいる。足を置く部分の模様は滑り止めになる。
右上段:レース用鐙;軽量化のために、アルミ製で細く小さく作られている。耐久性はやや劣る。
右中段:オーストラリア型安全鐙;落馬などの時、足が抜けやすく改良されている。
右下段:鐙台(stirrups rubber tread);滑って抜けてしまわないようにゴム製の踏み板がある。
Ⅲ-22右図:わが家に咲くアジサイ
10)鞍吊りと胸繋(むねがい):Breastplates or Breast girth

①ウマの体形等で鞍が後ろに下がってしまう(鞍ずれ)場合に使用。
②胸繋は、少し緩めに装着する。強く締めるとウマの能力を妨害するので、注意が必要。

Ⅲ23左図:胸がいと馬衣(図は競走馬の馬装具を参考)
左上段:胸がい《鞍吊り胸》breast girth。
左中・下段:鞍吊り《腹》と胸がい(鞍吊り胸)。
右上段:ニュージーランド・ラグ New Zealand Rug;防寒や防雨用で、後肢にまわして固定する装置が付いているので、昼夜放牧用。
ブランケット Blanket;薄い毛布状のもの。簡単に着脱が出来るので、準備運動や整理運動等での体温低下を防止。
右中段:メッシュ・ラグMesh Rug;ブランケットと同様であるが、馬体の汗を早く乾かす効果。
右下段:スウエット・フードSweat Hood;汗取り背腹。運動中に発汗を促し、過肥に対処。
Ⅲ-24右図:我が家の庭のクロッカス

次回は、放牧時、輸送時、厩舎内での馬の管理に必要な馬装具について述べる。

馬病理医の呟き=やさしい馬学講座 12

馬装具Ⅳ =馬の管理(放牧時、輸送時、厩舎内など)に
必要な保護具について=

日本では、古くから馬を大切にする風習が残っていて、野外での放牧時、輸送時あるいは厩舎内での健康管理、特に馬に多いケガや病気予防に日頃から細心の注意を払って飼育・管理をしてきた。例えば、全身の馬体の保護用具としての馬衣を輸送用あるいは厩舎・休養用に着用させ、疾患発生の多発しやすい四肢下脚部の保護用、あるいは尾部の保護用などと、肢巻の巻き方にしても細心の注意・管理をしている。
このコーナーでは、保護具の用途や欠点などを理解し、健康で丈夫な馬を作り上げようではありませんか!!

Ⅳ‐1田貫湖から富士山と朝日:
調教に関係する諺・言葉

*狐(きつね)を馬に乗せたよう:
狐を馬に乗せると、馬は落ち着かないことから、キョロキョロして落ち着きのない様を言い、転じて、人の言うことの信じがたいさまのことである。

*将(しょう)を射(い)んと欲すれば先ず馬を射よ:
武将を弓で射ようとするなら、先ず乗っている馬を射るべきだということから、大きなものを攻撃あるいは手に入れようとするなら、先にその周辺にある小さなものを攻めるべきであるという教訓。

*千軍万馬(せんぐんまんば):
多くの軍兵と多くの軍馬の意味で、転じて経験豊かで場馴れしていることのたとえ。

*十列(とおつら):
加茂の祭りの際に、天下泰平と五穀豊穣を願い、一種の『競馬くらべうま』が行われていた。
馬を10頭ほど並べて(十列で)駆けたものとも言われ、『加茂神社』は『随一競馬守護神』とも言われている。
日本の初代の天皇の神武帝は、日向の高千穂の宮で国を収めた後、平和平定を願い、加茂神社の本尊のある和歌山県の伊勢神宮を馬の守護神として崇(あがめ)められた。
天智天皇の頃に加茂神社は『牧』の制定のもとに、馬の調教進度を試すための猟場としても使われていた。

*野次馬。弥次馬(やじうま):
馴らしにくい馬、強い悍馬(かんば)、老馬のことを言う。
自分に関係のない事を人の後について、わけもなく騒ぎ回るその人を言う。

コミュニケーションの放牧、頭数、天罰に関係する日本古来の馬言葉

*牛は牛づれ、馬は馬づれ:
類を同じくする者が相伴うことを言うたとえ。

*馬が合う:
気が合うとか、意気投合すると言う意味。馬の放牧時にみられる。

*馬追い:
牧場で、野馬を牧柵内に追い込むことを言う。馬方が馬を追い込む時の掛け声を[馬追い声]と言う。古くは馬追いを一群にして行なっていたが、最近は馬を放牧する際には1頭1頭放牧地に連れていき、放す習慣になっている。

*驥尾(きび)に付す:
ハエが駿馬の尾について千里も遠い地に行くように、後進者が秀でた先達に付き従って、事を成し遂げたり、功を立てることを言う。坂本龍馬の功⇔北辰一刀流⇔吉田松陰⇔亀山書院。

*放埓(ほうらつ):
馬が埓を離れたい意味で、転じて、気ままに振舞ったこと,酒席に耽り(ふけり)、素行の収まらないことを言う。放牧の牧柵を『埓(らちとも言う)』。

*頭数;家数人馬改帳(いえかずじんばあらためちょう):
江戸幕府、藩が作成した戸口調査簿の編称である。秀吉の調査に始まり、1633年の肥後藩の人畜改帳が有名である。
現在では、政府が人畜の数量について食糧政策や産業政策、税収対策、人口調査などに実施しているものに相当する。

*天罰;泣いて馬謖を斬る(ないてばしょくをきる):
規律を保つためには、愛する者をも止(やむ)を得ず処分する意味。
例えば、兄の源頼朝(義朝の第3子)と義経(第9子)の仲の話。二人は異母兄弟。
義経が華々しい活躍をして役職を得たが、兄頼朝の許しを得ていなかったので逆鱗にふれ、弟義経の処分を命じたが、義経は自分の育った平泉の藤原秀衡(ひでひら)を頼ったが、既に亡くなっていて、4代目の藤原泰衡(やすひら)の兵に襲われ、1189年に死亡した。但し、旨くいった頼朝は後に神の使いの馬に天罰をくらい落馬して死に、北条氏に権威は移ったのである。

厩務員にまつわる日本の諺・言葉

*馬飼部(うまかいべ):
大和朝廷に仕えさせられた牧夫を[品部]と言い、大化の改新時代後でも[馬飼部]は差別用語であった。江戸幕府時代は[馬方]、明治時代は[馬丁]、[車夫馬丁]の類(たぐい)などと最近まで続いていた。次いで、[牧夫]、競馬人は階級差別は良くないと言うことで、[厩務員]になった。英語では男の厩務員をラッド[lad]、女性を[lass]と呼び、最近ではグルーム[groom]と呼ぶ。

*馬手(めて):
馬の手綱を持つ手の意味で、右手のこと。
騎射(きしゃ)の時、右手で獲物を射ること。
『馬手差し(めてざし)』が右の腰に差す短刀のこと。
『馬手の袖(めてのそで)』は鎧(よろい)の右の方の袖のことを言う。
弓を持つ手が左手で弓手(ゆんで)であり、馬を操る綱を持つ手が馬手(右手)である。

*馳駆(ちく):
馳駆とは馬を走らせることを言う。転じて、いろいろと走り回って世話をやくことの意味。
『馳突』とは、突進の意味で、世話をしすぎて個人の生活に介入し過ぎる人を言う。

*葬馬(そうま):
葬儀の搬送の時に、僧を乗せた引き馬のことを言う。
室町時代の武将は埋葬されるときは、葬馬に引かれて墳墓に向った。

*付馬(つきうま):
食い逃げや飲み逃げなどで、不足または不足払いの遊行費用代などを受け取るために遊び客に付いてゆく人のことを言う。

*土手馬(どてうま):
江戸時代に吉原の土手を通り、それに使った馬のことを言う。

1.保護馬装具 Protective Equipment

Ⅳ‐2左図:馬衣と固定用腹帯(図は競走馬の馬装具を参考)
Ⅳ‐3右図:下脚部の保護帯(図は競走馬の馬装具を参考)
上段:わんこover-reach boots or bell boots
下段:交突予防帯brushing boots
1)馬衣 Rug / Clothing:

①準備運動や整理運動の際、体温低下を防止する。
②調教中に腰部の筋肉の冷えるのを防ぐ。
③昼夜放牧、輸送等に気候や気温変化に対処するため。
④寒冷時に冬毛の密生をおさえる。
⑤運動中に発汗を促し、過肥に対処。
⑥アブやハエからの防護。
⑦装飾。
⑧エクササイズ・シーツ Exercise Sheets;調教中に腰部の筋肉が冷えるのを防ぐため。
⑨ランズダウン・クオーター・ラグLansdown Quarter Rug;調教中に腰部の筋肉が冷えるのを防ぐ。腹帯を緩めなくても取り外せる。

2)馬衣固定用腹帯Roller or Surcingle;ラグを固定するための腹帯。

①スティブル・ラグStable Rug:
防寒用に広く使用される。多くは胸前と胸腹部で留めるものが多い。

3)肢の保護帯:

①運動の際に、外傷や打撲などによって肢が傷害されるのを防止するために装着する。

②装着には、強く締め過ぎると血行障害を起し、緩過ぎると運動中に下がり、邪魔になったり、擦過傷をつくるので、細心の注意が必要。

③固定方法が尾錠式は尾錠が肢の外側で托革余端が後方に向くように装着すること。

④紐で結ぶ方式は、外側に結び目を作り、緊迫の程度が均一になるように締めること。

4)交突予防帯Brushing Boots;

①体側肢の蹄で肢下部内側を打撲することによって発生する外傷(交突傷)を予防するもの。

②管と球節の内側を保護、球節の内側だけを保護するものあり。前肢用と後肢用あり。

③わんこOver‐reach Boots or Bell Boots
*蹄冠部の交突傷や追突傷及び蹄冠躡傷を予防するためのもの。
*他には、コロネット・ブーツ(Coronet Boots)と呼ばれるものあり。

5)その他の保護帯:

①交突予防リング・ブラッシングブーツAnti‐Brushing Ring・Boots;交突傷や肘腫の発生予防。

②スケルトン・ニー・パッドSkeleton Knee Pad;腕節の打撲傷の発生予防。主に運動や輸送時に使用。

③ホック・ブーツHock Boots;飛節の打撲傷の発生予防。主に輸送時に使用。

④オーバーリーチブーツOvereach boots;追突防止帯、蹄踵や蹄冠の保護用。

⑤ヨークシャブーツYorkshire boot;後肢の交突傷防止用。

⑥腱保護用ブーツTendon Boots;デザインがブラッシングブーツに類似しているが、肢の後側にパットが当たるようになっている。

⑦輸送用ブーツTravelling Boots;輸送保護用肢巻きの代わりに使用され、長いパットが付いている。前膝/飛節から蹄冠までを保護するために使用。

⑧飛節ブーツHock Boots;輸送中に飛節を保護する。

⑨球節ブーツfetlock Boots;球節の内側を保護する。障害飛越の際には後肢保護用に使用。

6)輸送用保護具:

①輸送中、せまい場所、ゆれる場所で馬が怪我をしないように、また、寒暖の差による悪影響をうけないように馬体を保護する。

Ⅳ‐4輸送用馬装具模式図と名称:(図は競走馬の馬装具を参考)
7)四肢の保護帯protective equipment:

Ⅳ‐5図:四肢の保護帯:(図は競走馬の馬装具を参考)
①ヒール・ブーツHeel Boots;球節後面(打撲傷、くもずれ等)の発生予防。
②テンドン・ブーツTendon Boots;屈腱部の打撲傷の発生予防。
②シン・ブーツShin Boots;管部前面の打撲傷の発生予防。

Ⅳ‐6図:わが家のアジサイの花:
8)肢巻;バンデージBandages:

①外傷予防と同時に、弾力性のある素材を使い関節や腱、靭帯の支持機能を補佐し、腱炎、捻挫、骨折等の発生予防を目的。

②調教やレースなどの運動時に使用するものと、厩舎内や輸送時に使用する、2種類あり。

③厩舎内では肢の保温(血液循環促進)し、腱や靭帯の疲労を早く取り去る⇔タチバレ。また、冷却や薬剤の併用により、腱や靭帯の炎症予防や治療などに使用。

9)バンデージの注意点;

①常に一定の力で巻き、一部分を強く締めないこと。⇔不均衡だと、屈腱炎、皮膚炎、骨瘤などの発生を招くことがある。

②厩舎内用に装着する時は、下巻きを使用してバンデージを巻くこと。⇔下巻きはバンデージの圧迫を均一にする効果がある。

③留め具は、バンデージと同じ強さで締めること。⇔強すぎると部分的な圧迫となり、炎症を誘発する。

④留め具は肢の外側で留めること。⇔前面や後面では運動時にこの部分は伸縮が大きいで、骨や腱を圧迫し炎症を誘発する。

⑤長時間巻いたまま放置しないこと。⇔血行不良により炎症を誘発したり、外れて踏み掛けたり、ズレにより部分的な圧迫をきたす。

⑥常に清潔なバンデージと下巻きを使用すること。⇔不潔だと皮膚炎や細菌感染を起こす。常に数本用意し、こまめに洗濯し、良く乾燥さえること。

⑦バンデージを取り除いた後は、皮膚をよくマッサージして血行を促すこと。⇔薬剤を使用した時は、よく洗い流してから水を拭き取っておくこと。

Ⅳ‐7左図:肢巻きboots:管部、球節部及び蹄冠部用(図は競走馬の馬装具を参考)
Ⅳ‐8右図:管部及び尾部への肢巻の巻き方(図は競走馬の馬装具を参考)
上段:厩舎用肢巻applying a stable bandage
下段:尾巻きの巻き方how to put on a tail bandage
10)バンデージの種類と巻き方;1

①ポロ・バンデージPolo Bandage;ポロ馬に使って発展したもの。厚手のフェルトのバンデージで、下にはなにも巻かない。追突や交突等の防止。調教用に有効だが、雨天や重馬場では水分を吸収して重くなるので使わない。

②エラスティック・トレーニング・バンデージElastik Training Bandage;前肢用。

③Elastic Randown Bandage;後肢用、エクササイズ・バンデージとも呼ばれ、腱や球節の保護とサポートを目的としたエラスティック素材(伸縮性がある)のバンデージ。前肢用と後肢用があり、後肢用はクモズレ防止にもなる。調教やレース用に有効だが、ポロ・バンデージと同様、水分を吸収して重くなるので地面が乾いているときに使う。⇔持続的に圧迫することになるので、使用後は速やかに外してスタンディング・バンデージ等に巻き変えること。

④《巻き方》;やや薄めに下巻きを巻く。腕節や飛節の真下より下向きに螺旋状に巻き始め、球節のところで上に巻き返す。この時、球節後部を包み込み、球節前面でバンデージが交叉するように(8の字型巻き)二重以上に巻き、Vの字になるようにする。⇔血行を妨げるほど巻いてはいけない。

Ⅳ‐9左図:富士花鳥園の昼間のミミズク。
Ⅳ-10右図:富士花鳥園:昼間のフクロー何を狙う。
11)バンデージの種類と巻き方;2

①ベトラップ・アンクル・バンデージVet-Wrap Ankule Bandage;前肢用。Vet-Wrap Rundoun Bandage後肢用;とも呼ばれ、腱ベトラップ・ランニング(エクササイズ)・バンデージと球節の保護とサポートを目的としたエラスティック素材(伸縮性のある)バンデージ。調教やレース用。悪天候で重馬場でも使用できる利点がある。サポート効果はエラスティック・バンデージよりもやや劣るがクモズレ予防効果は高い。
《巻き方》;やや薄めの下巻きを巻く。腕節、飛節の真下より下向きに螺旋状に巻き始め、球節のところまで巻いたところで、球節の裏側に合成樹脂の丸いパッチを貼る。後はエラスティック・バンデージと同様に巻き終え、最後にもう一枚パッチを貼る。

②スタンディング・バンデージStanding Bandage;ステェブル・バンデージ、アブソービン・リニメント・バンデージとも呼ばれ,厩舎内や輸送時に使用する標準的なもの。⇔肢を保護することにより血液循環を促し、腱や靭帯の疲労を早く取り除きタチバレ防止用。
《巻き方》;巻く前にアルコールやヨードをベースにした薬剤(30%イソプルでも可)でよくマッサージし、血液循環を良くする。厚めの下巻きを巻き、腕節、飛節の直下より下向きに螺旋状に巻く始め、球節の下から上部へ巻き返し、管の横で留める。

12)バンデージの種類と巻き方;3

①ポルテス・バンデージPoultice Bandage;冷却。抗炎症作用のある粘土状薬剤(ポルテス、パップ剤等)を塗布し、その上にスタンディング・バンデージを巻く。⇔肢に強い衝撃や負担を掛けた後で、肢を冷やし腫れを防ぐために使用。
《巻き方》;ポルテス等の薬剤を厚み約3mm塗る。その上で濡らしたラップを巻く。最後にスタンディング・バンデージを巻く。

②スウェット・バンデージAbsorbin Sweat Bandage;ヨードをベースにした薬剤を塗布し、発汗を促し、血液の循環を良くし、肢を引き締める効果がある。⇔強い攻め馬をした馬の肢をスッキリと引き締めるため。
《巻き方》;ヨードをベースにした薬剤を塗布する。薄い布を巻く。その上に脱脂綿を巻き、熱をにがさないようにラップで覆う。最後に綿のバンデージをしっかり巻き、安全ピンで留めて一晩おく。翌朝バンデージをほどく。

③スタンデイング・ニイー・バンデージStanding Knee Bandage;リニメントまたはポルテスを塗布し、衝撃によって圧力の掛かることの多い腕節の炎症を予防する。
《巻き方》;薬剤を塗布する、通常のスタンディング・バンデージを巻く。綿を入れた長方形のバンデージの両端に切れ目をつけて紐状にしたものを腕節に巻く。

13)尾巻きTail Bandagesと巻き方;

①弾力性のあるゴムや縮緬(ちりめん)の素材で作られている。運動用の肢巻きより幅狭く短い。

②事前にウオーターブラシで尾を濡らしておくこと。

③4時間以上巻いていてはならない⇔巻く圧力により尾の毛が白くなったり、毛が抜けるので。

④尾根を自分の肩に乗せ、尾巻きを10cmほど残して尾の下に当て、尾巻きの端を1~2回巻き固定し、尾の下に向かい半分の幅が重なるように巻く。

⑤尾根の端まで巻いたら、尾の周りにテープを巻きつけて尾の横で止める。

⑥尾巻きを外す時は、先ずテープを外し、両手で尾巻きを引っ張ること。

次回は馬の調教、訓練等に必要な装具、特殊用具などの保護具について述べてみたい

馬病理医の呟き=やさしい馬学講座 13

馬装具Ⅴ =馬の管理(馬の調教、訓練等に必要な装具、
あるいは特殊用具など)に必要な保護具について=

馬の調教・訓練用の保護具としては、調馬策作業、ロングレイン作業やドライビング作業に用いる装具、あるいは癖馬用などの矯正や治療・鎮静用などに多くの装置・器具を使って扱い易く、人間とのコミュニケーションのとれる馬へと作り上げていくためにある。これら装具の多くは馬体の保護具ともなっていることから、このコーナーで確り装具の特徴や使用方法を知り、強い馬づくりに貢献しようではありませんか!!

Ⅴ‐1図 箱根スカイラインからの富士山:
調教に関係する諺・言葉

*狐(きつね)を馬に乗せたよう:
狐を馬に乗せると、馬は落ち着かないことから、キョロキョロして落ち着きのない様を言い、転じて、人の言うことの信じがたいさまのことである。

*千軍万馬(せんぐんまんば):
多くの軍兵と多くの軍馬の意味で、転じて経験豊かで場馴れしていることのたとえ。

厩舎にまつわる日本の諺・言葉

*馬舎祭(うまやまつり):
正月に行う厩舎の悪魔払いの行事を言う。
馬を崇拝した『馬魂碑』での馬魂祭には神主ではなくお寺の住職を呼んでお祈りしてもらう。

*厩火事(ウマかじ):
厩舎は木造、ワラや乾草で火事になり易いので、厩務員は火の用心に心がけること。蚊取り線香からの火事も多い。

*神馬の屋(じんめのや):
意味は神馬をつないでおく厩舎のことで、神馬は神社の奉納する馬のことである。

*曲がり家(まがりや):
旧南部領内にあるL字型に折れ曲がった茅葺屋根(かやぶきやね)の家屋を言う。内部には母屋と馬屋が続きになっている。
人間と馬が生活を共にする慣習から、曲がり家が生まれた。L字型の長い方には人が住み、短い方には1~2頭の馬が繋養されている。

馬の癖にまつわる日本の諺・言葉

*足掻き(あがき):
馬が前肢で地面を掻くことに由来し、ジタバタスルことの意味。馬の場合は俗語で『前掻き』のこと。人間と馬とのコミュニケーションの表現。

*騰がり馬(あがりうま):
躍り(おどり)はねる癖のある馬のことを言い、『はね馬』、や『かん馬』とも言う。
小さい時の馴致の大切さが理解出来る言葉。ハネッカエリ娘や、ジャジャ馬と同意語。

*噛む馬はしまいまで噛む:
悪い癖の容易に治らないことのたとえ。

*乗り据(のりすう):
牛馬などを制して騒がないようにする事を言う。『乗り静む(のりすずむ)』は乗って、暴れる馬などを静める意味。

*癖のある馬に能あり:
癖のある者には必ず何等かの取柄(とりえ)があるというたとえ。一種の癖馬(へきば)で、『癇性(かんしょう)の強い馬』は神経過敏で激し易い馬を言い、『駻馬(かんば)』は暴れ馬の意味で、感性の強い馬を言う。

Ⅴ‐2左図:大沼公園:湖月橋の湖面と睡蓮   
Ⅴ‐3右図:田貫湖休暇村から秋季の富士山を望む:
1.調馬索用具 Lungeing Equipment;

①馬調教の際、馬を音声で馴らしたり、人馬の親和を図ったり、あるいは準備運動、鎮静運動などに調馬索を実施する。また、背に障害のあるウマの調教にも有効である。

②用具には、調馬索用頭絡、策、追い鞭。必要に応じて大腹帯、サイドレインなど。

③調馬索用頭絡Lungeing Cavesson;カブソンとよばれるもので、索を操作した時に馬が頭をねじったり、苦痛を受けないようになっている。⇔鼻革が頬骨の下にくるように装着し、動かないようにして使うこと。

Ⅴ‐4左図:調馬索用頭絡(図は競走馬の馬装具を参考)
Ⅴ‐5右図:調馬索(図は競走馬の馬装具を参考):
調馬索Lungeing Rein;一端にカブソンに固定する尾錠が付き、他端に手を通せるようにプール状になっている扁平なロープで、綿布製や化繊布製がある。⇔握り易く、軽量で丈夫なもの。長さは約6m必要。

Ⅴ‐6左図:調馬索用頭絡(図は競走馬の馬装具を参考):
サイド・レインSide Rein;調馬索訓練を受けている馬に、あたかも騎手が乗っているかのような感覚を与える効果のあるもの。⇔ゴムが付いているものは騎手の指示に従わざるを得ない感じをウマに与える効果がある。
追い鞭Lungeing Whip;騎乗者の脚の働きとともにウマを推進させるものである。索はウマを制御するためのものである。
大腹帯Roller;サイドレインやシャンポンを装着する際に使用する。
Ⅴ‐7右図:わが家の花:アジサイ
1)調馬索に関連して

①新馬調教の際、馬を音声で馴らしたり、人馬の親和を図ったり、あるいは準備運動、鎮静運動などに調馬索を行う。また、背に障害のあるウマの調教にも有効である。

②用具には、調馬索用頭絡、策、追い鞭。必要に応じて大腹帯、サイドレインなどを用いる。

③調馬索用頭絡Lungeing Cavesson;
カブソンとよばれるもので、索を操作した時に馬が頭をねじったり、苦痛を受けないようになっている。⇔鼻革が頬骨の下にくるように装着し、動かないようにして使う。

④調馬索Lungeing Rein;一端にカブソンに固定する尾錠が付き、他端に手を通せるようにプール状になっている扁平なロープで、綿布製や化繊布製がある。⇔握り易く、軽量で丈夫なものを使うこと。長さは約6m必要である。

⑤追い鞭Lungeing Whip;ウマを推進させるもので、即ち騎乗者の脚の働きをする。索はウマを制御するものである。

⑥大腹帯Roller;サイドレインやシャンポンを装着する際に使用する。
*サイド・レインSide Rein;調馬索訓練を受けている馬に、あたかも騎手が乗っているかのような感覚を与える効果のあるもの。⇔ゴムが付いているものは騎手の指示に従わざるを得ない感じをウマに与える効果がある。

2)ロングレイン作業(各種装着方法)とドライビングlong reining:

①調馬索で正しく運動することを調教した後に、ハミに索を直結して訓練するものである。

②調馬索では馬体の収縮訓練ができないが、ロングレイン作業では、主に収縮訓練を実施するものである。

③ロングレイン装着方法は、多様であるが、いずれも長所、短所がある。

Ⅴ‐8図:ロングレイン作業は各国により多少の違いがある。(図は競走馬の馬装具を参考)

Ⅴ‐9図:ドライビング(図は競走馬の馬装具を参考)
左上段:調教用カブソンと水勒銜頭絡Lungeing cavesson and snaffle bridle
左下段:固定された鐙革と、上に巻き上げられたサイドレインStirrup leathers secured and side reins clipped up out of the way
右上段:腹帯ストラップに付けられたサイドレインSide rein attached to the girth straps
2.特殊馬装具special equipment
1)視野(左側図)や意識(右側図)をコントロールする用具と醋癖予防帯:

Ⅴ‐10図:視野(左側図)や意識(右側図)をコントロールする用具(図は競走馬の馬装具を参考):
左上段:アイシールドeye shield;JRAでは失明した側の眼にはレース中の使用は出来ない。
左中段:透明半頭面mono clear cup;失明馬や砂などの異物が眼にかかるのを嫌う馬の保護用。JRAではレース中の両眼の装着は認められない。
左下段:ホライゾネットhorizon net;トンボとも言われ。前を走る馬が跳ね上げる砂が眼にかかるのを嫌がる馬に用いる。レースに意識を集中する効果がある。
右上段:シャド-ロールshadow roll;頭の高い馬の鼻先に装着すると、その動きに意識が集中し、見ようとして頭を下げる効果を期待して用いる。また、馬体や馬場の影に驚く馬にも用いる。
右中段:チ-クピーシーズcheek pieces;頬革に装着し、後方の視野を遮り、前方に悪しきを集中させる効果を期待して使用する。
右下段:リップネットlip net;ノーズネットとも言われ、口唇に装着することで、馬の意識を鼻先に集中させて、周囲からの影響を減少させる効果を期待して使用する。JRAでは競走中の使用禁止。

Ⅴ‐11図(図は競走馬の馬装具を参考):
左上図5個の図:各種錯癖予防帯Cribbing Strap;錯癖はウマの悪癖の一つで、疝痛を起しやすいので、予防するための道具。
右上図3個:口籠Muzzles;シャンクチェーン・疝痛馬の食餌制限、寝藁の食べるウマ、咬癖のウマの予防用。
頭巾hood;右4個図:俗にメンコと呼ばれ、耳を覆う形状になっていて、音に敏感で狂奔(きょうほん)しやすい馬に使用。枠入り不良馬の目隠し用のものもある(ゲート用メンコ)。
2)頭巾:

①耳を覆う形になっていて、音に敏感で騒ぎやすい馬に用いる。一般にはメンコと言われている。レース用で、枠入り不良の馬に被せる目隠し用もある。

Ⅴ-12図左右:各種頭巾(図は競走馬の馬装具を参考)

Ⅴ-13図:鼻しばり、尾吊り、マルタンガール(図は競走馬の馬装具を参考)
左上段:鼻しばり。馬の意識を鼻先に集中させ、おとなしくさせる。
左下段:尾吊りロープ。馬の意識を尾に向けさせ、ゲート内で馬が落ち着く効果を期待する。
右上段:ランニング・マルタンガール。
右中段:ビブ・マルタンガール。
右下段:スタンデング・マルタンガール。
3)リップ・チェーン:

Ⅴ-14左図:リップ・チェーン(図は競走馬の馬装具を参考)
Ⅴ‐15右図:富士サファリパークの高齢なアジアノロバ
4)鼻しばり、尾吊り、マルタンガール

①マルタンガールMartingales;
馬が頭を上げ過ぎるのを防止するための馬装具。一端を腹帯に固定し、他端を手綱、鼻革、銜鐶などへ連結する。
連結する箇所によって馬への影響力の強弱が、手綱から鼻革そして銜鐶へと変化する。

5)その他の特殊馬装具

①ネックストレッチングバンド
Neck Strech Band:腹帯からハミ環を通して頭頸部にかけるゴム製のロープである。頭の拳上を制限し、頚から背の筋肉を発達・促進する効果がある。

②ジャーマン・マルタンガールGerman・Martingale:力が非常に強くて騎手に逆らって引っかかる馬で、他の装具では制御できない馬に使用する。

Ⅴ‐16図:(図は競走馬の馬装具を参考)
左側:ネックストレッチングバンド。
右側:シャーマン・マルタンガール。

Ⅴ‐17図:(図は競走馬の馬装具を参考)
上段:シャンボンchambon;頭を下げさせる道具。調馬索で使うと頸から背、腰の筋肉が鍛えられる。
中段:バランシング・レーンbalancing rein;
ジャーマンよりもあたまが柔らかく、馬のバランスを保ち、必要な筋肉を発達させる。装着法により3種類の方法が選べる。
下段:ゴッグgogue;腹帯から項部分、ハミを通して胸前ベルトにつなぐトライアングルバランスで、ハミ受けをつける調教道具である。

Ⅴ‐18図:大沼公園:湖月橋付近での魚網

Ⅴ‐19図:(図は競走馬の馬装具を参考)
左:チエーン・シャンクchain shank;曳き馬に使用。馬がうるさくて、抑えるのに苦労する場合に使用する。
3種類の使用方法あり。
①無口の横の金具にクサリ部分を通し、鼻上の部分を通り、反対側の金具に入れる。
②無口の横の金具に通して馬にくわえさせ、反対側の金具に入れる。
③無口の横の金具に通して、アゴの下を通り、反対側の金具に入れる。
右上段:ネックストラップneck strap;急な発進や、馬が騒いでバランスをくずした時にジョッキーが捉まるための装具である。
右下段:ワタリtie of the mane;レース用髪飾りのこと。装飾効果とレース中に手綱や騎手の手にタテガミのからみ、顔や目に触れるのを防ぐ効果を期待する場合もある。
6)各種マーカー:(図は競走馬の馬装具を参考)

Ⅴ‐20左図3点:マーカーMarkor:皮膚をあらかじめ水で濡らした馬体にあて毛並みに反したブラッシングをすることで、色んな模様をつけてドレスアップをすること。
Ⅴ‐21右図2点:蹴癖マーカー:尾に何らかの印をつけて蹴る癖のある馬であることを知らせる。
7)鼻捻子Nose Twitch:

①馬は視野が広く(350度)鼻先が見えない。食べ物の選別は触覚と嗅覚に頼る⇔鼻先(口唇)は知覚神経が集中(三叉神経の分布)⇔馬が嫌がる治療や手入れには、鼻捻子で鋭敏な鼻先に意識を集中させて事を進める手段に用いる。

《装着の手順》
①チェーンの輪を手首に通して、片側を小指に掛ける。

②鼻捻子の末端を片方の手で握り、鼻筋から上唇に撫でながら手を下ろす。

③親指を上唇の内側に入れ、その他の指で上唇をつかむ。

④鼻捻子の木部を真下に軽く引きながら(チェーンを右回りに)締めていく。

⑤最後の一締めで馬が立ち上がることがあるので、馬を保定している人間に声を掛けながら締めること。⇔鼻捻子を締めている者は馬の動きに合わせて、鼻捻子を離さないこと。一度失敗すると、二度目からは上唇をつかむのが難しくなる。

⑥鼻捻子で鼻翼が狭まらないように注意すること。

⑦鼻捻子は最短時間ですむように、作業を速やかに行うこと。

Ⅴ‐22左図:鼻ネジの手順模式図(図は競走馬の馬装具を参考)
Ⅴ‐23右図:鼻ネジの実施図(図は競走馬の馬装具を参考)

『以上Ⅰ~Ⅴの馬装具の主な図及び内容は、多くの参考書と共に益満宏行・競走馬の馬装具Ⅰ.
Ⅱ(1993、2005,2006)、永田雄三監修・馬学上下(2006)、軽種馬育成調教センター教材(年
号不詳)ABC第1部・第2部を基本資料として参考・引用させて戴いたことを明記します』

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