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【5分で丸わかり】厩務員になるには?

 競走馬の管理をするきゅう務員として活躍する場は、JRA (日本中央競馬会)、NAR(地方競馬全国協会)の2通りがあります。条件がまったく異なりますので、早めの準備が大切です。
JRAのきゅう務員になるには、競馬学校に入学して卒業することが必要です。入学に際しては、牧場経験および乗馬経験など、応募資格にさまざまな条件があります。
入学試験突破には、騎乗技術のほかにも馬の体調管理に必要な知識、経験が要求されます。さらに卒業後、(社)日本調教師会による採用試験に合格する必要があります。
一方、NARのきゅう務員になるには、調教師による面接試験他があります。

JRAの厩務員になるには

競馬学校の受験資格を満たす

JRAの厩務員になるには、JRAの競馬学校を卒業する必要があります。
JRA競馬学校厩務員課程を受験するには以下の条件をすべて満たす必要がありますので、チェックしておきましょう。

受験資格

・競馬学校入学時に中卒以上の学歴または同等以上の学力を有すると認められる者
・厩舎従業員として業務を行うのに支障がない健康状態であること
・以下の騎乗経験を満たすこと

a)競走馬・育成馬・乗馬の騎乗経験期間の合計が1年以上
b)単独騎乗による3種の歩法(常歩、速歩、駈歩)ができる

騎手課程は年齢制限(15歳以上20歳未満)や体重制限、視力などが求められますが、騎乗経験の有無は問われません。
一方、厩務員課程は年齢制限がなく、1年以上の騎乗経験と単独騎乗で常歩・速歩・駈歩ができることが条件となります。

入学試験を受ける

募集期間および入学時期

厩務員課程は半年で終了するため、募集も半年ごとに行われます。
募集期間は年によって変わりますが、おおよその時期は下記の通りです。
・3月中旬~4月上旬(秋期募集): 10月生・翌1月生を募集
・9月中旬~10月上旬(春期募集): 翌4月生・翌7月生を募集

具体的な募集期間は競馬学校のHPで発表されますので、必ずチェックするようにしましょう。同じ募集の中の入学時期(10月生か翌1月生か/翌4月生か翌7月生か)については競馬学校の方で振り分けを行いますので、受験生が選ぶことはできません。

試験内容

令和5年度から、1次試験と2次試験の2回に分けて行っていた試験を一括の試験で行うようになりました。
試験は千葉県白井市根にある競馬学校で行います。

【試験項目】
・書類審査
・身体検査
・健康診断(健診票による評価)
・運動機能検査
・騎乗適性検査
・本人面接
・学科試験<一般教養(国語、社会)、競馬一般>
・性格適性検査

以前は厩務員課程生にも体重制限(60kg以下)が設けられていましたが、現在は制限が撤廃されています。しかし、厩務員は将来、競走馬の調教騎乗ができるようになることが求められますので、70kgは超えないように気を付けましょう。
運動機能検査については、厩舎での業務を支障なく行なえる健康状態であるかをテストしており、毎年内容が変わります。例えば、片足つま先立ち、懸垂(順手握り)、しゃがみこみ、サイドステップ、立ち幅跳びなどがあります。
騎乗適性検査では調教鞍を使用し、スリーポイントおよびツーポイントの騎乗ができるかがチェックされます。スリーポイントとは鞍に座って乗る騎乗スタイルで、ツーポイントとはお尻を鞍から浮かせて乗る騎乗スタイルのこと。試験では、スリーポイント騎乗スタイルで正反動ができるか・ツーポイント騎乗スタイルで駈歩ができるかといった点がチェックされます。
※正反動とは、お尻がバランス悪く跳ねてしまわないように座ったまま反動を消す乗り方のこと。

学科試験については、「漢字の読み書き」や「社会」などの一般教養や、一般的な競馬の知識が問われます。競馬学校のHPでは、1部60円+送料で過去問を購入することもできますので、不安な人は入手して慣れておくとよいでしょう。
合否はおよそ1ヶ月半後にすべての受験者に通知され、JRAのホームページ上でも受験番号が確認できます。

競馬学校の合格率は騎手の場合5~10%程度と難関ですが、簡単ではないのは厩務員も同様。合格のためにはしっかりとした受験対策が欠かせません。馬のお世話や騎乗経験を積む方法としては、乗馬クラブや馬術部に所属する方法もありますが、最も効率よくスキルを学べるのは馬の専門学校でしょう。
馬の専門学校なら、馬の飼育管理や馬術、学科試験対策など、競馬学校の受験に必要なすべての内容を学ぶことができます。
スクールによっては中卒で入学したのち厩務員になるために学びながら高校卒業資格を得られるコースも用意していますので、高卒の人よりも一歩早く厩務員の夢に近づくことができるでしょう。

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競馬学校に入学

晴れて入学試験に合格したら、いよいよ厩務員になる夢に向けて競馬学校での生活がスタート!
厩務員課程の入学時期は1月・4月・7月・10月と年に4回あります。ご自分が案内された入学時期に合わせて準備を進めましょう。

6ヶ月間の教育期間で学ぶこと

競馬学校厩務員課程は競馬学校の寮に入り、6ヶ月間短期集中で厩務員としての知識・スキルを学んでいきます。
6ヶ月の厩務員課程は前期3ヶ月・後期3ヶ月に分けられており、学ぶ内容は以下の通りです。

前期課程

基本馬術・飼養管理実践・専門学科(馬学・馬術・法規・護蹄・競走理論・競馬のしくみ他)・特別講義・中間試験

後期課程

調教技術・飼養管理実践・専門学科(馬学・馬術・法規・護蹄・競走理論・競馬のしくみ他)・特別講義・卒業試験

競馬学校の1日

具体的にどのようなことを学ぶのか、競馬学校の1日のルーティンを例に解説していきます。

5:30 起床

厩務員課程の生徒は朝5時半に起床し、週に1回程度の頻度で検量もします。騎手課程の生徒ほど体重にシビアではありませんが、60kg以下を目指して体重をコントロールしていきましょう。

6:00 厩舎作業

馬房の清掃や馬の健康チェック、飼い付け作業(餌を与える)を行います。厩務員課程の生徒は厩舎作業をテキパキこなす必要がありますので、入学までに馬のお世話に慣れておくとよいでしょう。

7:00 朝食

管理栄養士が栄養バランスと体重管理を考えたメニューで朝食を用意しています。

7:30 実技

競走馬の調教をするために必要な騎乗技術の基礎を習得していきます。前期3ヶ月では基本馬術を、後期3ヶ月では競馬馬術を習います。
特に前期の基本馬術は重要ですので、しっかりと身につくまで実務教官がみっちり指導してくれます。

12:00 昼食
13:00 学科

厩務員課程の生徒は座学の勉強も非常に重要。例えば以下のような内容を学びます。
・馬学…馬の飼養管理や疾病などの基礎知識
・公正競馬…レースにおける公正さを確保するための考え方
・競馬法規…日本における競馬の施行を定めた法律

14:00 厩舎作業

各自が担当している馬の手入れや飼い付け作業を行います。

17:00 夕食・自由時間

1日の工程は以上となり、夕食から就寝時間までが自由時間となります(交代制で20時に馬の見回りをすることもあります)。
自由時間を利用して木馬を使ったトレーニングや、学科の勉強などに取り組む生徒も。厩務員課程の生徒は自由時間に外出もできるので、気分転換を図ることも可能です。

22:00 就寝

朝が早いので、22時には就寝となります。
7月中旬から9月上旬の夏期期間は4:00起床、21:00就寝となります。

JRA厩務員の採用試験を受験

競馬学校を卒業さえすれば厩務員の仕事に就けると思ってしまいがちですが、厩務員になるにはもう2ステップ段階があります。
・STEP1:JRAが実施する厩務員採用試験に合格する
・STEP2:厩舎の経営者、つまり調教師個人と雇用契約を結ぶ

卒業生全員に採用枠が用意されているわけではないので、卒業したら自動的に働き先が見つかるというわけではありません。JRA厩務員に空きがない場合、ひとまず地方競馬の厩務員になったり、育成牧場や生産牧場へ就職して、厩舎に空きが出るまで待機したりする人もいます。
人気の厩舎に採用されるためには、実力だけでなく運や人脈も必要となります。例えば育成牧場で働きながら厩務員の空きを待っている場合、そこに訪れる調教師と積極的に会話をし、名前と顔を覚えてもらうのも人脈づくりのひとつ。また、馬の専門学校にはインターンシップ制度があるところもあり、実習先がそのまま就職先となる生徒もいます。同じ学校の卒業生であることが採用へのきっかけになることもあるでしょう。

JRA厩舎スタッフとして働く

JRAでは厩舎スタッフとして働く上で4つのキャリアアップを用意しており、努力次第では調教師になることも可能です。

STEP1:厩務員

自分が担当する馬(概ね2頭)の手入れや飼い付け作業、馬房清掃、調教補助を行い、調教は担当しません。

STEP2:持乗調教助手

資格審査に合格すると、厩務員と同じように担当する馬のお世話をしつつ、調教師の指示を受けて担当馬の調教も行えるようになります。

STEP3:攻専調教助手

調教師による適性判断を通過すると、厩舎が管理する競走馬に騎乗し、調教師の指示を受け、調教ができるようになります。
調教師不在の時は、調教の指示や調教師の補佐業務もします。

STEP4:調教師

調教師免許の試験に合格すると、晴れて調教師になれます。
調教師は、会社でいうと社長の立場。厩舎の事業主として、馬主から預かった競走馬の管理・厩舎スタッフの雇用と育成・各馬に合わせた調教など、多岐に渡る仕事をこなします。

JRA厩務スタッフの声

茨城県にあるJRAの美浦トレーニング・センターで働いている当校(馬の学校アニベジ)の卒業生2人に、厩務員の仕事について聞いてみました。

・綱本さん
「厩務員になってまず大変だと思ったのは、馬に合わせて勤務時間を調整するので、朝が早いということ。夏は朝5時の調教に合わせて夜中の2時頃に起きるんです。2時から働いて9時半には仕事が終了。睡眠も夜に3時間、昼に3時間という感じで分けて寝るので、起きた時が朝なのか夜なのか分からなくなることもあります(笑)。
自分が担当する馬がなかなか勝てず悩んだ時期もありましたが、周りをよく観察し、自分の方からアドバイスを求めて試行錯誤するようになりました。今は担当馬の能力を最大限に引き出して開花させられるよう、目の前の馬としっかりと向き合うことを心がけています。」

・澁谷さん
「中学を卒業後、騎手になりたくてアニベジに入学しましたが、アニベジ在学中に思いのほか身長が伸びてしまって騎手の夢を諦めざるを得なくなり、厩務員志望に転向しました。
厩務員に実際なってみると、観戦していた時とは違った視点で競馬を見るようになりました。アニベジで馬のお世話には慣れたつもりでいましたが、仕事となるとまた責任感が違いますし、レースに向けて馬のコンディションを整えていくことにすごく神経を使います。
また、1つのレースに本当にたくさんの人が関わっていることが分かり、一勝することがいかに大変なことかを痛感しました。大きい夢を持つことも大切ですが、まずは目の前の一勝が大事。馬の人生を良いものにしてあげられるように支えていきたいです。」

★2人のJRA厩務員のインタビューをもっと読む>>

※記載している情報は2023年11月調査時点のものです。
※参照:
日本調教師会 公式サイト http://www.ijta.or.jp/
JRA 日本中央競馬会 競馬学校「厩舎スタッフを目指す方へ」 https://www.jra.go.jp/school/stable/work/
JRA 日本中央競馬会 競馬学校「厩務員課程生徒 募集要項」 https://www.jra.go.jp/school/entry/stable/
日本中央競馬会 競馬学校「令和6年度春期 競馬学校厩務員課程 生徒募集案内
(令和6年度4月生・令和6年度7月生)」 https://www.jra.go.jp/school/syorui/kyuumuin_yoko2024-01.pdf

NARの厩務員になるには

調教師と直接雇用契約を結ぶ

厩務員として働くには、NAR(地方競馬)の厩務員を目指す方法もあります。
地方競馬の厩務員になるには、JRAのように競馬学校を卒業する必要はありません。各地方競馬の厩舎を運営している調教師に直接雇ってもらう形になります。
JRAとNARの厩務員の就業者数を比較すると、JRAが約700名(栗東トレーニング・センター約250名・美浦トレーニング・センター約約460名)であるのに対し、NARは約2,097名。女性厩務員も175名在籍しており、NARの方は圧倒的に人数が多く、門戸が広いことが分かります(※令和元年9月1日時点)。行う仕事内容としてはJRAと大きな差はありませんので、できるだけ早く厩務員になりたいという方はNARの厩務員を目指すのも良いでしょう。

募集要項の一例

NAR厩務員の求人を探す1つの手段として、地方競馬全国協会の厩務員募集サイトで検索する方法があります。
2023年11月現在の募集の一例を挙げてみます。

佐藤博紀厩舎の厩務員募集内容(川崎競馬場)

・小向トレーニングセンターを勤務地として2名募集
・月給24万~、昇級・賞与あり
・仕事内容:競走馬の飼養管理と調教、それに伴う厩舎作業、競馬開催時の引き馬など
・勤務時間:2:30~8:00、14:00~16:00
・トレセン内に舎宅あり
・月に5日お休みがあり、有休あり、連休取得も可能

元騎手である佐藤博紀さんが調教師となって運営している厩舎です。
2015年に開業した新しい厩舎で「Smile!Enjoy!Happy!!」をスローガンに、20代から50代の男女8名が和気あいあいとした雰囲気の中、楽しく仕事をしています。馬にも人にも居心地の良い環境を整えています。

齊藤正弘厩舎 厩務員募集(門別競馬場)

・月給18万~35万、昇級・賞与・手当あり
・仕事内容:競走馬の引き馬、餌やり、ブラッシング、調教、厩舎の清掃など、日常の競走馬の飼養管理や、競馬開催中の引き馬など。ホッカイドウ競馬オフシーズンは1歳馬の調教など。
・勤務時間:5:00~10:00、13:30~16:30
・未経験可
・週休1日 年次有給休暇(5日) 年末年始休暇(7日)

北海道にある全国に通用する強い馬づくりを目指している厩舎です。
騎手も在籍しており、調教を得意としています。
乗馬指導も行っており、将来、調教師を目指したい方が経験を積むのにおすすめできる厩舎です。

塚田隆男厩舎 厩務員募集(名古屋競馬場)

・月給29万円~(使用期間3ヶ月の間)+進上金(賞金の5%)
・仕事内容:競走馬の引き馬・餌やり・手入れ・調教・厩舎の清掃など競走馬の管理全般に加え、競馬開催中は引き馬作業
・勤務時間:1:30~8:30、15:00~16:00
・未経験可。10代~40代まで
・月に平均して4回のお休み、当番制あり、有給休暇あり

東海ダービー、桜花賞、その他重賞レース獲得し、1,500勝達成している実績のある厩舎です。長く働けるやる気のある方を求めています。

NAR厩務員の声

川崎競馬場の佐藤博紀厩舎で働く女性厩務員の声をご紹介しましょう。
「乗馬クラブのインストラクターをしていたところ、佐藤博紀さんがお子さん連れで来たことをきっかけに厩務員という仕事を知りました。日々のお世話や努力の積み重ねで担当馬がレースに勝った時には、日常ではなかなか味わえない感動を体験できています。
仕事の難しさは、やはり馬は言葉が通じないので、指示通りに動いてもらえない時にもどかしさを感じます。担当する馬のお世話の仕方などは基本的に任せてもらえていますが、チームワークも大切にしています。
私にお世話をお願いしたいと、指名してもらえるような厩務員になりたいと思っています。」

ばんえい競馬の厩務員とは

ばんえい競馬は世界中でも北海道帯広市だけで行われている珍しい競馬で、体重1トン近くある大きな馬が、460kgから最大1tまでの重さがある鉄ソリを曳いて競います。騎手は馬にまたがらずソリの上に乗り、長い手綱で馬を操作します。
ばんえい競馬はおよそ200mの長さのレースで、途中に山などの障害物が2ヶ所用意されています。坂を上る前には馬の調子を整えるため一旦停止し、エネルギーを回復させてから登る必要があるなど、騎手の腕が通常の競馬以上に問われる競馬であり、大きな馬が競り合う迫力は格別です。
ばんえい競馬の厩務員の魅力は、通常の厩務員以上に参入しやすく、かつ、ステップアップが望めるところ。まったくの未経験からでも始めることができ、2年経験して試験に合格すれば騎手になることも可能ですし、騎手にならずに調教師になる道も選べます。

※記載している情報は2023年11月調査時点のものです。
※参照:
NAR 地方競馬全国協会「厩務員募集サイト」 https://job.axol.jp/gs/c/keiba/job/koza/1/detail?kozacd=1
ばんえい競馬 馬主情報局 https://banei-umanushi.com/

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